時代の変化
企業を取り巻く時代環境は10~15年で大きく変化する。
10年、15年前の世界から現在の世界を想像することは難しい。企業の持つ社会的使命・価値観も、利益追求・ステークホルダー中心から、大きく舵を切り、SDG‘Sの2030年までに目指す17のゴールに象徴されるような環境・社会・経済・人権まで広範な課題に対する、企業としての取り組み・社会貢献に、その存在価値が認められるようになり、社会的に責任ある行動が求められている。そこから乖離して、企業は独立して生存できない時代になりつつある。現下のコロナ禍で時代が大きく変貌を遂げるなか、企業はこの困難な試練の時代にいかに対応し、変化・適応できるかである。
投資の三分法、人生の四分法
人間は弱さと同時に、叡知を合わせ持った力強い存在
宇宙の138億年の悠久の歴史を考えれば、人の一生は一瞬の瞬きに例えられるかもしれない。しかし、人が一生に何度も後悔するには十分過ぎる程の時間が与えられている。出来ることならば、「チャレンジしなかった」という人生の後悔をいかに少なくすることができるかである。人生の幸福感を支える基本的な構成要素の一つである、一定の資産・財産を形成すれば、その資産・財産を背景に経済的制約から解放され、様々な場所で、様々な分野で、新たな活動にチャレンジすることができる。起業・投資を通じて築き上げたプラットフォームを次世代にバトンタッチして、次世代にもっと広い活躍の場を提供していくことも可能となるであろう。
リスクテイク
方丈記を表した鴨長明は、賀茂神社の禰宜(神職)の子として生まれ、和歌と管弦をこよなく愛したが、官職の禰宜を継ぐこと能わず、失意のうちに都を離れ、鴨川のほとりに居を移し、晩年は山中の簡素な庵住まいを選んだ。宮仕えの気苦労の多い生活に疲れ、最後は日野山の山間に隠棲する内に、その自然のあるがままの暮らしに喜びを見出し、古来より文人の一つの究極の憧れの隠棲生活を体現し、歴史的な名文を残した。しかし長明の方丈記をみると長明の関心は、生活の営む拠点である住まいに多大な関心があったことが窺える。
古(いにしえ)より人と住まいは現世に久しくとどまることがない。
安元の大火(1177年)、治承四年の辻風(1180年)、福原遷都(1180年)、養和元年の大飢饉(1181年)と天変地異を立て続けに体験した長明の、自然災害に対する迫真のルポルタージュともいえるその記録は、体験した者にしか記すことができない克明さでその惨状を記録にとどめ、その内容は詳細を極める。長明が実際に体験した事実に基づき辿り着いた晩年の境地の集約ともいえる「方丈記」のタイトルにもなった「方丈の庵」は、一丈(約3メートル)四方の、まことに簡素な作りで、それでいて必要最低限のものを備えた、長明お気に入りの住まいであった。人の住居はその時代の様々な要因(自然災害、老朽化、取り壊し、移転、遷都など)により、その言葉通り、その多くは永く原形をとどめることはない。
市場サイクル
不動産市場サイクル
市場サイクルには様々なものがある。不動産市場のサイクルは7年周期で、前回は2015年だったという。その説によれば次は2022年であるが、不動産市場が変動する背景には、銀行の不動産市場に対する融資姿勢・スタンスの変化が大きく影響を与える。と同時に不動産投資には企業・投資家の今後の景気の先行きに対する景気判断が大きく左右する。
1991年の日銀による、銀行の不動産融資総量規制による土地価格の大幅な下落、2013年に始まった日銀の異次元緩和策(3本の矢)等による株価・景気上昇サイクルは不動産市場に及び、都市部を中心に長期に亘る上昇を見せ、中核都市にも及んだが、2019年にはついに東京を中心とする経済圏に陰りが見え出し、2020年には本格的な調整局面を迎え地価上昇もピークアウトすると見られていた。そこに新型コロナウィルスによる「コロナショック」が全世界を襲った。その影響の広がりは誰も想定できず、世界経済全体に長期に及ぶと見られる。今はあらゆる景気の悪化側面ばかりが強調され、先行き不安感が増大し、今後かなりの期間に亘り、景気収縮・景気低下局面を迎え、不動産市場にも大きな波が押し寄せてくると思われる。
マイホーム派か賃貸派か
住宅ローンの光と影
ネットバンキング専業銀行の住宅ローンが好調にその残高を伸ばしている。
最大手の残高は5兆円を超えている。手軽さと低金利が魅力である。
世界中の低金利傾向を敏感に察知し、当分金利は低く留まるとみて、最近では通期で変動金利を選択する人が増えているという。低金利のメリットを十分に受けられることと、いざとなれば固定金利に乗り換える銀行の選択肢も増えている。銀行にとっては一度の取り組みで長く収益確保が見込まれる看板商品であり、審査も定型化され迅速で、返済シミュレーションも瞬時にできる。
しかしマイホームは手に入れた時から、ローンの毎月の返済負担もさることながら、毎日の通勤・通学、移住、転職などの人生のステージ選択に大きな制約を受ける。そのような状況のなか、若者中心に賃貸派が徐々に増加している。
一灯に託す
父親が岐阜県岩村藩(現在の恵那市)の家老であった幕末の儒学者、佐藤一斎の言葉。後の西郷隆盛らの幕末から明治に至る明治維新の志士たちに、大いなる思想的な影響を及ぼし、当時の東洋の古今の思想・哲学を集大成し、近代日本の思想的基盤を用意したとされる。生涯を学問に捧げ、その思想を四冊の著作「言志四録」にまとめ上げた。内容は深淵で、広大無辺で計り知れない。
その一生は、厳しい学問探究の日々と自己省察の生涯の上に成り立ち、一斎の為した思想・言葉はヒトを動かす力を今でも秘めている。