住宅ニーズの変化
単身世帯の増加
国立社会保障・人口問題研究所が2024年11月12日に発表した都道府県別世帯数の将来推計によれば、全世帯に占める一人暮らしの割合が今後2050年には27都道府県で40%を超えるという。
地方からも都市の賃貸住宅に人が移り住む
都市部に住む単身世帯だけでなく、地方にも配偶者を無くした高齢者の単身世帯が急増している。高齢となり車を手放すと、買い物・医療サービスも十分に受けられない。維持修繕管理費・固定資産税の負担、老後の生活資金等を考え、戸建て住宅を手放し、生活に便利な都市部の賃貸住宅に転居を考える高齢者も増加するだろう。または有料老人ホームに入居したものの、空き家となった住まいは、独立した子供たちも住む予定もなく、築年数も経過し、希望する価格ではなかなか売れない。単身世帯の増加とともに空き家の増加も連動しており、今やその数は900万戸を超えている。
少子化と地価高騰、地方の空き家対策
少子化の勢いが止まらない。最新のデータでは、2023年の出生数は、72.7万人(前年比△5.6%)合計出生率は1.20であった。2024年の出生数はさらに減少し70万人を割り込むと見られている。
国土交通省が不動産の基準地価(7月1日時点)を9月17日に発表し、住宅地、商業地等全用途の全国平均が1.4%上昇となったが、これはバブル期以降の1991年以来の33年振りとなる上昇幅である。東京、大阪、名古屋などの大都市圏の全用途が前年より1.2ポイント高い3.9%の上昇となった。2024年1月時点での全国約31万5000地点の標準宅地の平均は前年比で2.3%プラスとなり、3年連続上昇が話題となっている。
中古マンションの購入ポイント
自分の求める住環境、職場との距離、教育環境、生活利便性、広さ、築年数、地下鉄までの距離、最低戸数等の様々な要因の、物件ごとの比較検討、自分と家族のためのマンション探しは大変な労力を要する。働きながら、資料集め、比較検討、現地実査等、それに割く時間とエネルギーは決して軽くない。経済的耐用年数、管理組合の活動状況、共用部分の定期清掃と維持管理と修繕実施状況と毎月の管理費・修繕積立金との兼ね合い、坪単価等の物件価格のパフォーマンス、自己資金、返済資力、勤続年数、銀行融資、住宅ローン控除との兼ね合いなど、どこかで妥協して決断せざるを得ないのが実情である。しかし、その中で外していけないのは、流動性、すなわち売りたいときに時価で売れる物件かという換価性に尽きるであろう。
少子化・未婚化・高齢化の対応策
ローマの哲人、セネカは自身の著書「道徳についてのルキリウスへの手紙」のなかの言葉で、概略、以下のように述べている下りがある。
「・・・妄想からくる恐怖くらい壊滅的でどうしようもないものはない。苦しみを先取りして何になるのか。それが本当に来た時に苦しんでも遅くはない。将来に対する備えは必要だが、まだ見ぬ未来のために、現在を犠牲にするのもほどほどにしなくてはならない。」
また、様々な煩悩を解き放つ賢人の言葉として次のような言葉もある。
「過去を追ってはならぬ。未来を願ってはならぬ。過去は既に捨てられ、未来はまだ来ていない。」
現代人の目の前の日常には、絶え間なく、将来の不安を掻き立てるような話題に事欠かない。
心の豊かさを求めて
世界の経済開発競争は止むことなく、GDP成長率と一人当たりGDPの伸びは一国の経済政策の善し悪しを判断する主要な指標となり、戦後から一貫して、政治が追求すべき最優先の課題であり、「GDPの増大がすべての社会問題を解決する基本要素」かのごとく見做されている。GDPは一国の経済活動量の物差し、物の豊かさの物差しとしては依然有効だろうが、個人の生活実感とはかなり掛け離れている。社会生活全般に対する満足度と個人心の豊かさは一様に測れない。主に欧米との極端な政策金利差から生じた為替変動により、円安が進行する経済金融環境の中では、特に比較が困難である。長期的な視野で、社会全体と個人の心の豊かさを反映した、実感の伴う、GDPに代わる「幸福の物差し」が探し求められている。
2023年を振り返って
デフレからインフレ社会へ
日銀は2023~24年度の消費者物価指数の前年度比上昇の見通しを引き上げ、23、24年度とも2.8%にした。22年度の実績(3%)を含めれば3年連続で2%の物価上昇目標を上回る。(日経朝刊23.11.1)
日本経済は、長期の低成長・デフレ経済から抜け出し、インフレ傾向が持続する社会へと変貌を遂げたが、給与所得の伸びからインフレ率を差し引いた実質賃金は、依然マイナス傾向が続き、庶民の実感としては、食料品・水光熱費が高騰した分だけ生活費を削るという自衛策しかない。
労働力不足はあらゆる業界の共通の困難な課題となっており、社会の失業率全体は低く抑えられているものの、中小企業の給与・賃金の引き上げ原資は乏しく、中小企業は人件費の増加か、省力化機械設備投資かという選択を迫られており、必要資金の割には、売上増加や生産性の向上・利益に結びつかず、将来の後継者問題も大きな問題となっている。
2023年、不動産をめぐる動き
アメリカ・中国の不動産
アメリカにおいては、過去の金利の変動が激しく、固定金利住宅ローンの選択が全体の7割を占めるという。住宅ローン金利の急激な上昇は、中古住宅の売却を見送らせ、新たに高金利の住宅ローンを組むことを躊躇させる要因として働いており、中古住宅市場の在庫が減少し、価格自体は維持されている。FRBは都市部の商業用不動産の市場動向について懸念を表明している。都市部中心街のオフィス需要が引き続き弱いという。
中国では、恒大不動産グループおよび碧桂園の市場に対する不安がクローズアップされ、不動産バブルが弾け、不動産投資は逆回転を始めている。中国経済のGDPの3割を占めるともいわれる不動産投資に大きく依存してきた中国経済は、不動産価格の極端な低下は不動産のマイナス資産効果となって現れ、今後長く中国経済全体の足を引っ張る可能性が高い。さらに世界的な分断政策により、海外マネーが中国から逃避する傾向もその懸念を強めている。