絶えず努力をしているものは、我らが救うことができる。
『絶えず努力しているものは、我らが救うことができる。そのうえ、この人には愛が天上から与えられて、幸せなものの群れが心からこの人を迎え入れるのだ。』(ゲーテ)
悪魔に魂を売り渡してでも若さを手に入れようとしたファウスト。この言葉は天使たちが歌う恩寵の歌の一節である。
親との同居が増加する世界
日本のみならず、欧米でも若者の3分の1が親と同居するようになったという。(日経新聞R5.5.29朝刊)
米統計局によれば、18歳から34歳の若者で親と暮らす人の割合は1960年に23%、1990年に27%、2021年に33%にまで高まった。
親との同居の割合で低いのが北欧、デンマーク16%、スウェーデン17%、フィンランド18%。北欧社会では20代前半に家を出て自立した生活を送るのが社会的な規範となっている。対照的に親との同居率が高いのが、イタリアの71%、スペイン65%、クロアチア77%と紹介している。単純比較が難しいと断っているが、韓国が70%、日本は20年で47%と南欧ほどではないが若者の親との同居が多いという。
その最大の要因は住居費の高騰と学費の高騰だと紹介している。日本の住居費・学費も高騰の一途である。親との同居の増加は婚姻数の減少となり、出生率は低くなるのが当然の帰結である。
変化との闘いを避ける若者
若くして社会に出て揉まれれば、絶え間ない技術革新と経済的な変動とそれに呼応した社会・政治的な動き、そして実生活に及ぶ将来の生活に対する不安で、人は様々な反応を示すが、若くして家庭を築く選択肢より、親との同居で居心地のよい生活を享受しようとする、パラサイト・シングルを選択する若者が増加している。
啐啄同時という言葉
鳥が卵から孵ろうとする雛が自ら内側から殻を突き破ろうとする動きに呼応して、同時に外からはその殻を破る手助けをする親鳥の様が『啐啄同時』という言葉だ。可愛い子には旅をさせろという昔からの諺通り、外の世界に出ようとする子に、お金よりも経験を積ませる機会を与えるのが親の役割である。啐啄同時、一定期間の養育の後には、若者の自立を促し、遠い将来・老後の不安など振り捨てて、広い世界に出てゆく旅立ちを応援したいものだ。若者が次の世界を担うのだ。その為にも、若き子育て世代に合った環境と低廉で良質な住居を提供するのは、現代を生きる大人社会の果たすべき重要な役割であろう。