2022年を振り返り
2022年を振り返り、ロシアによるウクライナ侵攻とその後の各国の合従連衡、世界的物流網の混乱による供給制約と、世界各地の地政学的変動、新型コロナウィルスの変異と各国の封じ込め対応策の違い、食料・資源・エネルギーの高騰による世界各地でのインフレ・物価高騰、エネルギー価格の暴騰、急激な金利上昇、各国の財政赤字拡大・景気悪化、食料危機・エネルギー危機など、世界は歴史的にも例を見ないほどの急激な変化に直面した。まさに「VUCA」Volatility,Uncertainty,Comprexity,Ambiguity、「変動性、不確実性、複雑性、曖昧性」の一年であった。見通しはことごとく外れ、3か月先の将来を誰も予測できないのが現実だ。
地球的規模では、温暖化ガスの増加による環境破壊・気候変動は激しさを増し、旱魃、洪水、森林火災、海洋諸国の海水面上昇による海岸線の浸食などが深刻さを増し、自然環境破壊の影響が多くの生命に、社会に、人々の個人生活に、無視できない直接的な現実的な影響を及ぼす時代となった。
人類は、「分断と格差」という言葉に象徴的に示されるように、人種・国籍・民族・宗教の対立、各国の国力・経済力・軍事力の変動による既存の国際秩序の崩壊、関係の悪化、増加する移民難民問題、貧富の格差拡大、ジェンダーギャップ、人権問題、核の拡散などの解決すべき課題は山積されている。
しかし、それは反面、地球をめぐる無数の衛星が地上の鮮明で詳細なGPS画像を提供し、インターネット環境が整備され、多くの人々がアクセス可能となり、世界的規模で瞬時に必要な知識と情報の入手が容易となり、そこに飛躍的なコミュニケーションの手段の発達が相まって、今まで隠れていた問題が明るみに出て、議論を呼び起こし、共通の課題として認識され、多くのオープンな議論がなされた結果、人々の思考様式、行動様式に変化を与え、その早い変化は人々に戸惑いと不安感をもたらし、急激な変化に揺れる現実社会を映し出しているという側面もあるだろう。
世界的な経済紙「エコノミスト誌」が2021年ブッックオブザイヤーに選出し、現代を代表するビッグ・シンカーと呼ばれる歴史学者「ヨハン・ノルべリ」氏による著作「OPEN」において、同氏は「シカゴ原則」を紹介している。
それは、「慎みや相互の尊重などの配慮は、アイデアの議論を閉ざすための口実としては絶対に使えない。そのアイデアがコミュニティの一部にとって、いかに反発を感じる不愉快なものだったとしても」というものだが、太古の昔、ネアンデルタール人が淘汰され、ホモサピエンスが繁栄したのも、集団内で分業を行い、遠隔地との交易で得た様々な食料、道具、装飾品など、生活を支えるものを集団内で広める、有益な情報を共有する社会の形成とコミュニケーション力の違いだという学説が有力だという。社会的分業制、自由交易を支えるオープンな精神、オープンな議論、オープンな社会が経済力を高め、世界をリードしてきた事実を世界的な視野で、広範な歴史的事実をもって明らかにし、それらの要素が社会の進歩発展の根源的要因であったとその著作で説いている。
世界は分断され、停滞し、二極化をたどり、先進先端科学技術の囲い込みは一層進み、一部の富裕層はさらに富を独占しつつあり、相対的貧困は拡大し、インフレ・通貨安に苦しむ発展途上国と貿易参入障壁をさらに拡大しようとする欧米先進国グループ、資源高・エネルギー高の恩恵を蒙る産油国、その中で工業化を成し遂げ比較的順調な発展を続けるアジア諸国も、内部には様々な困難な課題を抱えている。しかし世界の「OPEN」の大きな流れは誰も止めることができないだろう。
地球の人口は、国連の発表によれば今年、世界の人口は80億人を超えたという。来年にも世界一の人口を擁する国は中国からインドに変わる見通しだという。最も多くの留学生をアメリカに送り出し、世界のIT企業のトップを輩出しているのもインドである。私たちの乗る「宇宙船地球号」は一体どこに向かっているのだろうか。果たして同じ船に乗る、運命共同体としての一体感・連帯感を人類は取り戻せるのだろうか。2023年はその変化の兆しが現れることを願うばかりである。