住宅ニーズの変化
単身世帯の増加
国立社会保障・人口問題研究所が2024年11月12日に発表した都道府県別世帯数の将来推計によれば、全世帯に占める一人暮らしの割合が今後2050年には27都道府県で40%を超えるという。
地方からも都市の賃貸住宅に人が移り住む
都市部に住む単身世帯だけでなく、地方にも配偶者を無くした高齢者の単身世帯が急増している。高齢となり車を手放すと、買い物・医療サービスも十分に受けられない。維持修繕管理費・固定資産税の負担、老後の生活資金等を考え、戸建て住宅を手放し、生活に便利な都市部の賃貸住宅に転居を考える高齢者も増加するだろう。または有料老人ホームに入居したものの、空き家となった住まいは、独立した子供たちも住む予定もなく、築年数も経過し、希望する価格ではなかなか売れない。単身世帯の増加とともに空き家の増加も連動しており、今やその数は900万戸を超えている。
遠心力と求心力
現代社会の民主主義・市場メカニズム・技術革新の進展は、いずれも社会と個々人をバラバラにする遠心力として働きやすい。その結果、社会の公共性への感覚や、他者や未来への共通・共同の認識が希薄になり、地域社会の繋がりが希薄となり、ややもすれば他者と一緒に何かするという共同精神も弱まってくる。
一方で都市部の持つ求心力に逆らうことも難しい。人々が生きていくうえで求める、ほとんどの生活要素を都市部は効率的に具備している。便利な交通網、行政サービス、生活インフラ、仕事と職場、介護施設と医療サービス、買い物・外食サービス業、休養と娯楽施設など、ほとんどの機能は都市部とその周辺部に集中している。近年の顕著な少子化傾向に加え、増える一方の結婚しない20代30代の若者世代、配偶者の死別又は熟年離婚による中高年単身世帯も増加しており、徐々に都市部の単身世帯の増加は顕著な傾向となって表れている。
家賃の地域格差
地方と都市部の家賃格差は激しい。30㎡以下の賃貸マンションの水準は、札幌市43,238円仙台市51,541円、福岡市53,178円、名古屋市62,132円、大阪市64,204円、に対し東京都23区は94,279円とかなり格差があり(24年9月アットホーム発表)、平均的な地方都市と比較すれば東京は2倍以上ということになるだろう。
インフレによる家賃の高騰
物価インフレに加え、サービス・家賃の値上げも目立つ。賃貸契約書に賃料の改定の記載があるが、「現行の賃料額が、固定資産税等その他の負担の増減、不動産価格の上昇もしくは下落等の経済事情の変動、近隣の同種の土地建物の賃料との比較によって不相当となった場合に協議により認められる」という内容が一般的であるが、現在の消費者物価及び相続税路線価評価は上昇しているものの、地価上昇に比べ固定資産税の上昇はかなり遅れてやってくる(3年ごとの見直しルールで2024年は見直し・評価替えの年となる)わけだが、最近は契約更新時に値上要請を通告する傾向も強まっている。借りる側、貸す側共に近隣の家賃相場をよく調べ話し合いで対応することが重要となるだろう。
終の棲家、高齢者のグループホームという選択肢
高齢者は住み慣れた自宅に長く住み続けたいと誰もが思うが、それが叶わぬ場合も多々あり、賃貸住宅止む無しとなるが、高齢者の入居を嫌がる家主も多く、一定の収入と近隣の身内・連帯保証人というハードルは結構高い。一人で自立できない場合は、有料老人ホームという選択肢が一般的になりつつあるが、多くの場合、その入居費・食費・生活雑費の負担は重く、年金だけでは賄いきれないのが現状だ。
子ども家族と同居という選択肢もあるが、生活のリズム、ペースも違い、気兼ねすることも多い。その解決方法の一つはグループホームではないだろうか。配偶者と死別したら、まだ独りで自律的に生活ができるうちに入居し、入居者同士が慣れ親しみ、相互に不足する部分、弱い部分を補い助け合いながら、より長く安心して老後の生活が送れれば理想であろう。老人ホームより経済的な負担も比較的軽く、何よりも老後の一人暮らしの不安と孤独が、同世代の一緒に住む仲間によって癒されるのが高齢者にとっては一番だ。共同生活のルールと責任と負担を明確にし、しっかりと運営されるグループホームに対する需要は今後ますます高まるだろう。