市場サイクル
不動産市場サイクル
市場サイクルには様々なものがある。不動産市場のサイクルは7年周期で、前回は2015年だったという。その説によれば次は2022年であるが、不動産市場が変動する背景には、銀行の不動産市場に対する融資姿勢・スタンスの変化が大きく影響を与える。と同時に不動産投資には企業・投資家の今後の景気の先行きに対する景気判断が大きく左右する。
1991年の日銀による、銀行の不動産融資総量規制による土地価格の大幅な下落、2013年に始まった日銀の異次元緩和策(3本の矢)等による株価・景気上昇サイクルは不動産市場に及び、都市部を中心に長期に亘る上昇を見せ、中核都市にも及んだが、2019年にはついに東京を中心とする経済圏に陰りが見え出し、2020年には本格的な調整局面を迎え地価上昇もピークアウトすると見られていた。そこに新型コロナウィルスによる「コロナショック」が全世界を襲った。その影響の広がりは誰も想定できず、世界経済全体に長期に及ぶと見られる。今はあらゆる景気の悪化側面ばかりが強調され、先行き不安感が増大し、今後かなりの期間に亘り、景気収縮・景気低下局面を迎え、不動産市場にも大きな波が押し寄せてくると思われる。
景気循環
景気循環には50年の長期循環であるコンドラチェフ循環、建設投資の20年周期に相当するグズネッツ循環、企業の設備投資に起因する循環、企業在庫に起因する循環など様々な景気循環説が主張されてきた。日銀の異次元緩和策のように、大規模なマクロ経済政策の実施が及ぼす影響は、企業の景況判断に基づいた設備投資意欲に影響を及ぼし、景気循環説は当てはまらなくなったと言われている。
過去の景気循環・景気変動に対する歴史学習効果もあり、政府は過去からの経験を活かし、様々な景気刺激策・財政支援策とその枠組みを準備し、機動的で大胆な金融財政政策を矢継ぎ早に打ち出す。世界はグローバリゼーションの進展によりさらに一体化し、景気循環の波動は迅速にその影響は世界の隅々までに一気に広がる。
世代交代による学習効果の希薄化
問題は様々な経済活動に関わり、大きな歴史的経済変動を体験した世代もいずれ第一線を退き、新たな未経験な世代が登場するということである。歴史的な経済変動も思いのほか速やかに忘れ去られるという事実である。
2008年9月15日に始まったいわゆるリーマンショックはどれほどの教訓を残しただろうか。市場のバブルはなぜ繰り返すのか。すべて「今回は以前とは違う」という言葉で多くの場合片付けられていく。先の世代の学習効果は世代交代により、速やかに薄れていくと考えられることだ。
市場予測の困難さ
景気の行方は誰にも分からない。景気指標の企業モニタリングによる短期予測と、過去の中長期データによる統計学的な事象の発生確率がわかるだけである。
地球温暖化、人口増加、資源の枯渇、新たな自然エネルギーの登場、IT・AI・バイオテクノロジーの驚異的な進歩、高速なコミュニケーション手段の発展、自国第一主義による交易条件の変化、世界経済における中国の台頭、各国の財政状態、政治の潮流、人々の思惑など様々な要素が交じり合い、どの要素がどの要素と重なり優勢となり表面に現れるのか、いつどこに焦点が当てられるのか、経済成長至上主義が及ぼす価値観・生活様式・技術革新・情報過多などの変化のスピードに、多くの人は取り残され、社会は二極化し、既存の社会的価値観も急速に変化を迫られるなかで、情報の非対称性、過剰流動性と人の思惑が介在する市場予測の予測である景気予測は、はなはだ的中率が低く、先行きは見通せないのが現状である。
市場サイクルは繰り返す
景気予測は見通せないものの、市場サイクルは回り続ける。人は過去をすぐ忘れるが、市場サイクルには自律調整力がある。市場では前回と同じことが起こることは二度となく、同じパターンで循環を繰り返すことはない。しかし、同じパターンは繰り返さないものの、少しずつ変化し、前回の韻を踏むというのが、専門家の見立てである。
韻を踏むとはどういうことか。
ある一定の確率で規模・頻度は異なるものの、過去と同種同様な事象が現れる。行き過ぎた振り子は必ず戻るという基本メカニズムは不変ということである。しかし振り子は中間地点を必ず行き過ぎるのである。その折り返し転換点はいつ訪れるか。いつの時にも、人々の希求する、そのものの本源的な価値に気付き、再評価される機運が高まり、再度投資されることにより底を打ち、回復していくという市場サイクルは、もっとも大きな本流の流れであり、今も厳然と存在している。