一灯に託す
「一燈を提げて暗夜を行く。暗夜を憂うること勿れ。只だ一燈を頼め」
父親が岐阜県岩村藩(現在の恵那市)の家老であった幕末の儒学者、佐藤一斎の言葉。後の西郷隆盛らの幕末から明治に至る明治維新の志士たちに、大いなる思想的な影響を及ぼし、当時の東洋の古今の思想・哲学を集大成し、近代日本の思想的基盤を用意したとされる。生涯を学問に捧げ、その思想を四冊の著作「言志四録」にまとめ上げた。内容は深淵で、広大無辺で計り知れない。
その一生は、厳しい学問探究の日々と自己省察の生涯の上に成り立ち、一斎の為した思想・言葉はヒトを動かす力を今でも秘めている。
自らに頼め
人生には、いくら努力し願っても成就しないものもある。運もある。願望・希望の成就は偏に自らの力に頼り、如何に切実に願うかどうかに懸かっている。ヒトの為すべきことを為した後に、天命を待つ気持ちになれるかどうか。そこまで自己研鑽を積めるか、日々の修行、路程は遠く険しい。誰に頼むこともなく、宇宙の万理は我が心に在りと心得て、まずは自らの心に頼めと一斎は説く。
足下を照らす灯火
先を見通せない濃い霧に包まれた人生行脚の中で、険しく暗い夜道を行く上で一歩前を照らす一つの灯火となりたいと思う。
人生の道標
暗夜行路の人生の荒海のなかで、天には冬の夜空を照らす北極星、オリオン座、冬の大三角などの遙か遠くの天上の輝きを見つめ、地には地平線の彼方に白く輝く頂きを目指す若き旅人の一つの道標、一里塚たらんことを願うばかりである。